憂鬱とつぶやいてみる画用紙に見えない白い花はあふれて
(ゆううつとつぶやいてみるがようしにみえないしろいはなはあふれて)
鉄塔が埋め尽くす空てっぺんの青に漂うさまざまのゆめ
(てっとうがうめつくすそらてっぺんのあおにただようさまざまのゆめ)
さようなら四月の欠片遠く来て知らない街の広場へ放つ
(さようならしがつのかけらとおくきてしらないまちのひろばへはなつ)
ひとりではないよ綿毛は風に乗りただいまただいまこだまみたいに
(ひとりではないよわたげはかぜにのりただいまただいまこだまみたいに)
虹色のTシャツ十年分たたむ衣装ケースはしずかな棺
(にじいろのてぃーしゃつじゅうねんぶんたたむいしょうけーすはしずかなひつぎ)
灰色の夢耳の奥紋白蝶舞い立つ朝に注ぐ牛乳
(はいいろのゆめみみのおくもんしろちょうまいたつあさにそそぐぎゅうにゅう)
産み付けたまま忘れ去りある春に嫉妬うすむらさきの翅持つ
(うみつけたままわすれさりあるはるにしっとうすむらさきのはねもつ)
マネキンとしての生き方担がれて白い恥丘を晒しつつゆく
(まねきんとしてのいきかたかつがれてしろいちきゅうをさらしつつゆく)
文字化けのカタカナの渦たどる夜「天国」そこら中に散らばる
(もじばけのかたかなのうずたどるよるてんごくそこらじゅうにちらばる)
Uターンラッシュに紛れ巻き戻す記憶桜が散るあたりから
(ゆーたーんらっしゅにまぎれまきもどすきおくさくらがちるあたりから)
鈍色の空は繋がる携帯の写真知らない街を夢見る
(にびいろのそらはつながるけいたいのしゃしんしらないまちをゆめみる)
印刷所だった廃墟に死んでゆくゴム手袋と誰かの詩集
(いんさつじょだったはいきょにしんでゆくごむてぶくろとだれかのししゅう)
考える端から野原脳にはシロツメクサの少女がひとり
(かんがえるはしからのはらなづきにはしろつめくさのしょうじょがひとり)
噛み砕くキャンディ薄荷色の空何処かの街に落ちるミサイル
(かみくだくきゃんでぃはっかいろのそらどこかのまちにおちるみさいる)
信号の赤がこぼれていく真昼現実という眠りのなかに
(しんごうのあかがこぼれていくまひるげんじつというねむりのなかに)